確率
1940年代の話になるが、
僕の祖父は、戦場で盲腸になると大変だということで
事前に盲腸を摘出する手術を受けた、結果祖父は手術で入院し
その間に終戦を迎えた。
一方、祖母は戦時中満州に疎開しており
終戦と同時に、ソ連兵に捕まらぬよう命からがら日本へ
帰国した。
父方の祖父は、戦場で実際に兵士として戦っていたが
奇跡的に五体満足で終戦後帰国することができた。
両祖父母とも、終戦後日本国内で出会い結婚し
それぞれに僕の父と母が生まれ、その何十年か後に
父と母が出会い、結果として僕がこの世に誕生した。
遡れば、第一次大戦も、日露戦争も、日清戦争も、幕末の騒乱も、
戦国時代から様々な飢饉や疫病迄、僕の祖先が歴史のどこかで遺伝子を
残す機会を得ることなく死に絶える確率は、おそらく生き延びる確率より
ずっと高かったはずだ。
しかし、僕は天文学的な確率の中にあって今ここにこうして存在し
また次の世代へ遺伝子を残す機会を掴んでいる。
僕は、どちらかといえば無神論者だし、スピリチュアルにも興味はない
しかし、歴史を振り返り今という時を考えるとき、この不思議な確率と
いう奇跡に思いを寄せずにはいられない。
間違いなく、世に生を得るは事を為すにある。
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